炭の遠火で水分を抜く、そのひと手間が旨みを引き出す 浜松市「SUMI base やおや」

 火に近づけすぎない。あえて距離を取り、時間をかけて水分を抜く。その積み重ねで、食材の輪郭がはっきりと立ち上がる。浜松市中央区肴町の「SUMI base やおや」は、炭火を使った“原始焼き”を軸に据える店だ。去年5月のオープン。カウンター、テーブル、個室を備えた店内で、若いスタッフが活気をつくりながら、料理はあくまで真っすぐに仕上げてくる。
 まず、この店を知るなら「原始焼き 浜名湖産うなぎ」からがいい。使うのは、ブランドうなぎの“でしこ”。肉厚でやわらかく、臭みがないのが特徴だという。このうなぎを、酒・みりん・塩でつくった漬けダレに一昼夜置き、味をなじませる。串に打ち、炭火でじっくり火を入れる。ポイントは低温で時間をかけること。余分な水分が抜け、旨みが中に残る。仕上げは白焼き。表面はカリッと香ばしく、中はジューシーなまま。塩とワサビで食べれば、脂のコクに辛みが差し込み、後味が引き締まる。シンプルな食べ方だからこそ、火入れの違いがそのまま出る。

原始焼き 浜名湖産うなぎ(880円)
原始焼き 浜名湖産うなぎ(880円)

 同じ原始焼きでも、素材が変わると印象は大きく変わる。「甘々娘」は森町の鈴木農園で朝採れされたトウモロコシを使う。糖度18〜20度という甘さを持つ品種で、これを炭火でじっくり焼く。粒の皮が薄く、熱が入ることで内側の甘みが外へにじみ出てくる感覚になる。焼きトウモロコシというより、甘みを引き出すための調理。火で味を濃くする、という基本をわかりやすく体現している。
 

原子焼き「甘々娘」(880円)
原子焼き「甘々娘」(880円)

 魚なら「かつを 炭たたき」が光る。御前崎港で水揚げされた初鰹を使い、トリュフ塩、ピンクソルト、沖縄の海塩ぬちまーすを合わせたオリジナル塩を強めに振る。そこへ炭の火柱で一気に表面を焼く。短時間で水分を飛ばし、旨みを閉じ込める方法だ。皮目はパリッと香ばしく、中はもっちりとした食感。炭の香りがふわりと乗ることで、鰹そのものの力強い味に奥行きが出る。焼きすぎないこと、香りをつけすぎないこと。その加減が、この一皿の要になる。

かつを 炭たたき(1190円)
かつを 炭たたき(1190円)

 もう1皿、「金目鯛姿焼き」も印象が強い。天竜川河口で揚がる金目鯛を使い、内臓を取ってからじっくり焼く。一般的なグリル焼きとは違い、火を遠くに置くことで皮目はパリッとしつつ、身にしっかり水分を残す。結果、ふっくらとした食感になる。シンプルな料理ほど差が出るというが、この皿はまさにその典型だろう。焼き魚の延長ではなく、別の料理として成立している。

金目鯛姿焼き(2780円)
金目鯛姿焼き(2780円)

 SUMI base やおやの料理は、炭火という調理法を“演出”で終わらせていない。水分を抜く、香りをのせる、焼きすぎない。その積み重ねが、素材の輪郭をくっきりさせる。片付けのいらないバーベキューのような楽しさをうたうが、皿の上ではきちんと料理として成立している。炭の前でじっと火を見ながら、今日は何を焼くか考えたくなる。そんな夜に似合う店だ。

炭の遠火で水分を抜く、そのひと手間が旨みを引き出す 浜松市「SUMI base やおや」

SUMI base やおや
住所:浜松市中央区肴町319-1 NOAビルB1
電話番号:053-525-6162
定休日:月曜日
営業時間:火曜~木曜17:00~23:00/ 金曜17:00~24:00/ 土曜16:00~24:00/ 日曜16:00~23:00
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