稲も、レンコンも、大根も…深刻な農業被害 ヌートリア捕獲ハンターに同行 浜松市 /迷惑動物の現場(3)
農家:「初めはビックリしましたね。親子で見たんですよ」
農家:「堤防に巣を作るので、堤防が弱くならないか心配」
住民から不安の声がでている動物の正体は、ヌートリア。南米生まれのネズミの一種で、大きいもので70センチほどに。つぶらな瞳に、モフモフの毛並み。見た目はかわいらしくも見えますが…。
草食ですが、鋭い爪と前歯を備え、凶暴な一面も。年に2~3回、1回あたり5匹ほどの子どもを生む繁殖スピードに加え、天敵がいないため、まさに“ネズミ算式”に増加。
年間出荷量の5分の1が被害に
深刻なのは、農業への被害です。
ハスの花の生産農家 野島茂一郎さん:「この花のハスが食べられてしまって、枯れてしまったんです」
狙われたのは、ハスの根。年間出荷量の5分の1、およそ400本が被害を受けました。
浜松市によりますと、稲やレンコン、大根が食べられるケースもあり、農業被害の件数は、年々増加傾向にあります。
ハスの花の生産農家 野島茂一郎さん:「食べられたら、そりゃ、もう本当に憤慨ですよ」
捕獲ハンターに同行
一番の対策は、捕獲して数を減らすこと。番組では、市の依頼を受けてヌートリアを捕獲するハンターに同行。前日仕掛けた罠の場所に向かうと…。
ルーツジャパン 岡本浩明代表:「ちょっと小ぶりですね」
いきなり、ヌートリアがかかっていました。さらに、別の場所でも。
ルーツジャパン 岡本浩明代表:「入っています」
ディレクター「入ってますね。きょう、早くも2頭目ですね」
ルーツジャパン 岡本浩明代表:「この(檻の)中に指を入れれば、噛みつく」
この日は9つの罠で3匹捕獲しましたが…。
ルーツジャパン 岡本浩明代表:「目撃情報は年々増えているんですけど、それに対して捕獲が追いついていない」
去年、浜松市では、ヌートリアの目撃件数が360件、捕獲数が157匹でともに過去最高に。今年は9月までで去年を上回るペースで目撃情報が寄せられている上に、記録的な猛暑で抑えられていたヌートリアの活動が今の時期から活発になるといいます。
ルーツジャパン 岡本浩明代表:「捕獲者がいれば多少は抑制できるのですが…」
担い手不足の解消に市が罠の無料貸し出し
ヌートリアを捕獲するには狩猟免許が必要。捕獲できるのは岡本さんと地元の猟友会などに限られています。
担い手不足の解消へ、今年度新たに浜松市が始めたのが…。
ハスの花の生産農家 野島茂一郎さん:「今、ヌートリアがかかっています」
主に農家を対象に、罠を無料で貸し出し、特別に捕獲を許可する取り組みです。ハスの花が被害に遭った野島さんも、先月罠を設置し、すでに5匹捕獲しています。
ハスの花の生産農家 野島茂一郎さん:「捕まえてからハスの枯れていた場所から根が出てきて、今まで通りの青い葉っぱが見えた時点で、ヌートリアの食害がなくなったんだな、とわかりました。ホッと安心する感じです」
ヌートリアを捕獲している岡本さん。“その後”を考えた模索も始まっています。
捕獲したヌートリアを食材にも利用
ディレクター「今からどちらに行かれるんですか?」
ルーツジャパン 岡本浩明代表:「今から山口シェフのところにこのヌートリアを届けに上がるところですね」
向かったのは、菊川市の飲食店。
ルーツジャパン 岡本浩明代表:「すみません。遅くなりました」
西欧料理サヴァカ 山口祐之シェフ
「いつもありがとうございます。確認させていただきますね。(箱開けて)ありがとうございます」
実は、食べられるヌートリア。こちらではジビエ料理の食材の一つとして、数年前からヌートリアを扱うように。それを知った岡本さん、去年から無償で提供しているそうです。
西欧料理サヴァカ 山口祐之シェフ:「こちらはヌートリアのもも肉になりまして、これで4人前ぐらい取れるサイズになります。シンプルに塩コショウでソテーして、ソースをかけていただきます」
出来上がった一皿は「ヌートリアのロースト」。農作物に被害を与える迷惑動物が、メーン食材に変身しました。
西欧料理サヴァカ 山口祐之シェフ:「脂身も少ないですし、非常に良質なたんぱく質を持っていて非常に優良な食材だと思います」
岡本さんが山口シェフのヌートリア料理を食べるのは、意外にもこの日が初めて。
ルーツジャパン 岡本浩明代表:「ん~、ありがとうございます。おいしいです」
山口シェフによれば、ヌートリアは豚肉と鶏肉の中間ぐらいの肉質なんだそう。
ルーツジャパン 岡本浩明代表:「スピード感を持って捕獲することが大事。粛々と捕獲は続けていきますけど、利活用といったところも意識して続けていければと思いました」